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予告 現代志野の双璧 鈴木藏VS若尾利貞

お知らせ2021.09.09

 日本独特のやきもの「志野焼」は、室町時代末期に岐阜県の美濃地方で初めて焼成されたと言われています。
白いやきものが日本になかった時代に、白いやきものに憧れ、白いやきものを生み出そうとした無名の陶工たちがその端緒と切開いたとも言われています。以来400年以上に渡り日本人に愛され続けたやきもので、その独特の魅力から多くの作家が「志野」に挑戦し、焼成の難しさから日本のやきものの頂点に君臨しています。
 今回の企画展は、現代志野の頂点に立つ二人の巨匠、鈴木藏と若尾利貞の志野作品を展示し、現代志野の今日の到達点を俯瞰すべく企画しました。
もとより、個人運営による小さな美術館ですので、展示数も限りがありますが、現代志野の双璧としてそびえ立つ二人の作家が生み出した「美」は十分ご堪能いただけると確信しております。
 二人の特徴は独創的な造形美が持つ力強さと作品の持つ品格にありますが、二人ともに特筆すべきは卓越したその技術にあると考えます。
 最近の陶芸界に顕著な傾向として、造形美に力点を置きすぎてそれを裏打ちする技術の未熟が見える作品が多いと個人的には痛感していますが、二人の作品には造形美を支える卓越した技術が明確に見て取れます。
 鈴木藏氏は1994年に「志野焼」の人間国宝に認定され、以後も「藏志野」と呼ばれる独創的な志野を発表し続けています。
氏の作品の特徴は他の追随を許さぬその力強い造形力にあると思います。
今回展示される「志野・花器」の持つ力強さと造形は、作家渾身の作品であり現代志野の到達点を表していると思います。
 若尾利貞氏は現代の「志野焼」の中でも「鼠志野」の頂点に立つ作家で、日本独特の琳派様式の美を現代感覚で昇華し、「鼠志野」の分野に絵画的美を確立した作家です。
力強さと品格が至上の「志野焼」の世界で、作家の人間性を反映した若尾作品の品格は「芸術表現は畢竟作家の品格の写しである」という核心を提示しています。
 どうぞ400年以上に渡って日本人に愛され続けてきた「志野焼」の現在の立ち位置を、二人の巨匠作品からご堪能ください。
個人的には、おそらくこれから先10年以上に渡り、二人に肉薄できる志野焼の作家は排出しないだろうという悲しい確信がありますが、この私の確信が間違いであることを強く望んでいる次第です。
 今回の企画には、鈴木藏氏の長男で「緑釉(織部釉)」で広く知られる鈴木徹氏と、若尾利貞氏の長男で「青瓷」でいま一番注目されている若尾経氏の作品も併設展示いたします。ふたりとも父親の薫陶を受けながらも、それぞれが父と違う道を歩んでいるいわばサラブレッドですが、多くのファンにはこれから彼らが選択する進路から目が離せないことでしょう。

現代志野の頂きをご堪能頂ければ幸いです。
                                                         静岡陶芸美術館

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